考えるヒント21 『愛着と飽き』
今日は『愛着と飽き』についてお話したいと思います。
人間は『愛着』を持ったり『好き』になったりすること以上に『飽き』という感情を多く持った生き物です。
なぜあんなに美味しいのにケーキやハンバーグを毎日食べると飽きるのか。
なぜ好きなアーティストの曲でも、1日に20回聴こうと思わないのか。
なぜ大好きな交際相手と、3日連続会うより 一週間空けて会うほうが気持ちが高ぶるのか。
これらはすべて人間にのみ備わった『飽き』という感情からくるものです。
他の動物は毎日同じ物ばかり食べるし、同じ場所にいるし、同じつがいと四六時中一緒にいます。飽きという感情が備わっていません。というよりも備わっている人間のほうが特殊といったほうがいいかもしれません。
それではなぜ、人間にはそんな特殊な『飽き』という感情が備わったのか。
それはまさに進化の過程で備わったものなのです。
他の動物はもちろん毎日同じ場所で同じものを食べることによって安定した生息環境を維持できます。他の個体と出会うことによる危険も回避できます。
しかし、人間は世界中のさまざまな場所へ行き、ありとあらゆるものを食材とし、ひと月に何百人もの人間と会います。
これはただ単に、人間には好奇心や冒険心がたまたま備わっていただけ、と思われがちですが、実はそうではありません。
生物が遺伝子情報として備えているもののすべてには必ずなんらかの生存や子孫繁栄に有利な情報が備わっているのです。
つまり、人間はいろいろな場所へ出向き、いろいろな物を食べ、いろいろな人と会ったほうが生存に有利なのです。他の生物とは全く真逆の遺伝子を持っているのです。
それはなぜか?
人間は賢い脳を持っているがゆえに、自分の知らない範囲外の危険な場所へ行っても、すぐにそれを克服しプラスに変えることができます。
生息場所を争うより、他に移ったほうが安全なのです。さらには危険や困難や新しいものを克服することにより、より生存に有利な知恵や頭脳を獲得します。それによって一カ所に止どまっている部族よりも遥かに強くなります。
そして、他の動物の100倍ともいわれる豊富な食材を調理して食べることにより、ある一つの食材の不作や減少による飢餓を他の食材により補うことができます。
人間は他の動物の100倍もの、食材における保険を携えているのです。
さらには人間は助け合う精神を持っています。ボノボという種の猿とチンパンジー以外の地球上のすべての生物は助け合うという概念を持っていません。自分もしくは一族以外はすべて敵です。
しかし自分がリンゴを100個持っていて、相手が芋を100個持っていれば、絶対に50個ずつ分け合って助け合ったほうが有利です。
さらには人間は知恵を与え合って助け合うこともできます。食物の栽培方法、住居の建築方法、舟の作り方、薬の作り方、社会のルールの決め方など、より多くの人と交流したほうが生存のための知恵が得られます。それらの利は他人や他部族と接することによる危険を遥かにしのぎます。
このように人間は、知恵と克服する頭脳を備えているが故に、『愛着』や『依存』という生命普遍の原理を捨て、世界中のさまざまな場所へ行き、ありとあらゆるものを食材とし、ひと月に何百人もの人間と会うという、他の生物では考えられない『飽き』という遺伝子を有したのです。
そうであるからこそ、『飽き』という一見生存に不利とも思えるとんでもない遺伝子を、人間は多分に有しているという事実を十分に理解した上で、『恋愛』や『結婚生活』その他諸々、その事実とは反比例した『依存心』を必要とする分野について、深く思慮し、相当の覚悟で臨まないかぎり、3分の1の離婚組に必ず入ってしまうという事実も同時に有しているのだということを知っておかなければいけません。
残念ながら人間は必ず飽きるのです。
それは進化の過程で獲得した揺るぎない事実なのです。
あなたの好きな人へのその想いも…
だからこそ単純な幻想的な「好き」という感覚ではなく、具体的な相手の精神や能力などを認めた上で、『恋愛』や『結婚』などに臨むべきであるし、
人生におけるすべての事柄において、単純にその時の感覚だけで『好む、好まない』を判断するのではなく、実質的な価値を十分に考慮した上での、『飽き』に左右されない好み方や判断基準というものを常に心がけるべきなのです。
人間社会における文化の中で、最も飽きやすいものこそ
何を隠そう
恋した相手、『恋人』なのです…
考えるヒント21『愛着と飽き』でした
To be continued…